給湯器は燃焼機器なので、ユーザーの安全を守るために多数の安全装置が搭載されています。これらの安全装置は無くてはならないものですが、経年劣化による故障が多く、故障してしまうと危険な状態でなかったとしても給湯器が一切使用できなくなってしまいます。
このページでは給湯器に搭載されている安全装置にはどのようなものがあるのかをまとめてみました。エラー番号や対処法、注意事項もまとめてあるので、安全装置のエラーに悩まされている方はぜひ参考にしてください。
給湯器に搭載されている安全装置の種類と役割
オイルセンサー
石油給湯器に搭載されている安全装置で、油漏れを検知して燃焼を停止させる役割を持っています。
屋外設置の給湯器の場合、経年劣化で端子部分が錆びてしまったり、給湯器内で水漏れがあると水がかかって壊れてしまうことがあります。エラー番号はE800で、油漏れを検知した場合は「油漏れの改善+オイルセンサー自体の交換」が必要です。
加圧防止安全装置
給湯器のお湯の出口部分に搭載されている安全弁です。水抜きをする際に開放することがあります。給湯器内の圧力が急激に高くなるとお湯が逃げてくることがあるため、排水管にホースで繋ぐのが望ましいです。
使用年数が経っている給湯器の加圧防止安全装置を外す場合、固着していてプライヤーなどを使用しないと開けられない場合があります。また、開けることでOリングが傷んでしまうと、取り付け直しても水が漏れてくる可能性があるので注意してください。
過熱防止安全装置(温度ヒューズ)
熱交換器やバーナーなどの熱を持つ部品に搭載されている他、機種によっては給湯器の外装部の内側に張り巡らされているケースもあります。万が一給湯器から出火した場合に、焼き切れることで運転を強制的に停止させる安全装置です。
一つの給湯器に複数搭載されていて、経年劣化によって部品自体の故障も目立つ安全装置と言えます。エラーはE140で、抵抗値不良(接触不良)の場合はリモコンの電源入り切りで使用できたりもしますが、放置して改善するタイプのエラーではないため、直ちにメーカーに連絡してください。
経年劣化によって故障してしまうことが非常に多く、使用年数が経過している場合は燃焼不良を併発していることも多いです。
空焚き安全装置(ハイリミット)
空焚きを防止する安全装置で、ハイリミットと呼ばれたりします。熱交換器やバーナーなどの熱を持つ部品に搭載されていて、一つの給湯器に複数の空焚き安全装置が搭載されています。
給湯器の構造上、基本的に入水がなければ点火動作には入らないため、空焚きを防止する目的というよりは「経年劣化による詰まりが原因で、部品が過剰に熱を持つのを防ぐ」という目的があります。
エラー番号はE200で、リモコン電源の入り切りで復旧しない場合はバーナーや熱交換器が詰まっている恐れがあるので、直ちにメーカーに連絡してください。
減圧弁、安全弁
主に石油給湯器のセミ貯湯式で搭載されている必要部材です。内蔵されている機種もあれば、外部に取り付けが必要な場合もあり、外付けが必要なのに取り付けるのを忘れてしまうと、熱交換器の変形や破裂につながります。
一般的に言われている安全装置とは少し種類が異なるものの、セミ貯湯式の給湯器には必要不可欠な存在です。
再点火防止装置(インターロック)
瞬間湯沸かし器に搭載されている安全装置で、一酸化炭素中毒のリスクがある場合や不完全燃焼が懸念される状況の時に再点火させないようにする役割があります。
酸欠などが原因で燃焼状態が悪くなって失火してしまった場合に、十分な換気をせずに3回点火を繰り返すとロックされてしまい、解除するまで動かすことができなくなってしまうので、再点火防止装置はくれぐれも作動させないようにしましょう。
解除するにはメーカーを手配しなければなりませんが、出張点検料が発生します。
サーミスタ
給湯器のありとあらゆる部分に搭載されていて、主に温度を測る目的で搭載されている部品です。安全装置という安全装置ではありませんが、沸騰防止サーミスタや排気サーミスタなんかは安全に直結するケースも少なくありません。
多くのサーミスタは滅多にエラーを出しませんし、経年劣化で故障するというケースもあまり無いです。
耐震自動消火装置
石油給湯器に搭載されている安全装置で、揺れを検知すると燃焼を停止させる役割を持った部品です。
屋外設置の給湯器の場合、経年劣化で端子部分が錆びてしまったり、給湯器内で水漏れがあると水がかかって壊れてしまうことがあります。 エラー番号はE100で、揺れが収まった後はリモコン電源の入り切りで復旧します。
立ち消え安全装置
燃焼中の炎が何かしらの原因で消えてしまった場合に、ガスを遮断する目的の安全装置です。これによってガスが出っ放しになるのを防いでくれます。
エラー番号はE121(給湯回路)、E122(ふろ回路)、E123(暖房回路)で、それぞれどの回路で立ち消え安全装置が働いたかによって番号が変わります(機種によっては721、722、723というケースもあります)。
不完全燃焼防止装置(COセンサー)
一酸化炭素中毒を防止するための安全装置です。稼働時間が決まっているため、性能部品でありながらも消耗部品という考え方もできます。
エラー番号はE38で、エラーを出す場合は稼働時間が10,000時間を超えたか、安全装置として作動したか。あるいは不完全燃焼防止装置自体の故障や基盤が故障した可能性もあります。
漏電安全装置
給湯器内にある小さなブレーカーです。給湯器が漏電している時、漏電安全装置が作動することでお家のブレーカーが作動しないようにします。
リモコンの電源が入らないという場合、給湯器内で水漏れがあったり漏電しているような場合には漏電安全装置が作動している可能性があります。作動した場合はエラー番号は表示されず、総じて「リモコンの電源が入らない」という症状になります。漏電安全装置が故障している場合は、ユーザーは気付かないことが多いです。
安全装置が作動する原因で考えられるもの
給湯器の経年劣化、老朽化
安全装置が作動する原因として最も多い要因は「給湯器の経年劣化、老朽化」です。給湯器の機器寿命・耐用年数は7年~10年ですが、徐々に燃焼状態も悪くなっていきます。
燃焼状態はバーナーやファンモーター、電磁弁などの様々な部品によって影響を受けるため、どれか一つでも性能が落ちてくると悪化しやすいと言えます。燃焼状態が良くないまま稼働すると、今度は熱交換器の詰まりを引き起こし、温度ヒューズやハイリミットが作動する原因になるというわけです。
温度ヒューズの場合、安全装置そのものだけが故障してしまうケースも少なくありませんが、使用年数が7年以上経っている場合は決して燃焼状態が良いとも言い切れないため、温度ヒューズだけを交換してもまたすぐに修理が必要になるケースも少なくありません。
水漏れや油漏れによる故障
安全装置類はその性質上、決して丈夫には作られていないため、給湯器内で水漏れなどがあれば真っ先に影響を受けてしまいます。水漏れや油漏れ自体も経年劣化が原因であることが多いですが、この場合も安全装置が壊れた原因を取り除いた上で安全装置そのものの交換も必要になります。
仮に水漏れの影響で安全装置が壊れてしまった場合、水漏れにはパイプのピンホールや部品同士の接続部のOリングの劣化が考えられます。一箇所がそうなってしまったのであれば、他の部分も同様に傷んでいる可能性があるため、給湯器の使用が7年を超えている場合は修理よりも交換・買い替えを検討した方がいいかもしれません。
瞬間湯沸かし器の場合はちゃんと換気しながら動作させること
ガス小型湯沸器(瞬間湯沸かし器)は換気不足により酸素濃度が低下して燃焼状態が悪くなると、安全装置が作動してガス弁を遮断します。そして燃焼が停止した後「お知らせランプ」が点滅します。
この場合、一酸化炭素が発生している恐れがあるため、まずは窓を開けて換気してください。もしここで十分に換気せずに再点火した場合、事故につながる可能性があるだけでなく、再点火防止装置(インターロック機能)が作動する可能性があります。
インターロックは使用上の不具合に該当するため、例え新品の瞬間湯沸かし器であっても解除には修理費用が発生します。
安全装置が作動した際の鉄則、対処方法
エラーコードの内容、給湯器の外観をチェックする
まずはエラーコードの内容をチェックしてください。安全装置が作動または故障すると、リモコンにエラー番号が表示されます。ここで何の安全装置が作動したかが分かります。
ユーザーで対処できるものについては取扱説明書にも記載がありますが、エラーの内容が燃焼系なのか危険回避系なのかが分かるだけでもだいぶ違うので、状況によってはネットで調べるのもおすすめです。
そして給湯器の外観をチェックしてください。恐らく無いとは思いますが出火した跡や外装部の変形などがないかを調べ、それと一緒に水漏れ等がないかどうかも調べましょう。水漏れがある場合は入水バルブを閉め、におい等から燃料漏れも怪しい場合はそれぞれ適切な対処をして燃料も止め、直ちにメーカーに連絡してください。
屋内設置の場合は窓を開ける等して換気する
屋内設置の給湯器、または瞬間湯沸かし器やバランス釜の場合は、不完全燃焼を起こした可能性があるため、窓を開ける等して換気を行ってください。この時、換気扇などは動かさずに窓や扉を開ける方法で対処することをおすすめします。
作動した安全装置の内容にもよりますが、不完全燃焼を引き起こしている場合に一酸化炭素やガス漏れの可能性があります。ガス漏れの時に換気扇を動かすのは危険(換気扇が動作する際に万が一スパークしたらそれが点火源になる恐れがある)なので注意してください。
コンセントリセットはNG行為
給湯器の安全装置がエラーを出した時、給湯器のコンセントプラグを抜き差しして強制的にエラーを消すという方法があります。ネット上にはこれが「エラーから復帰させる裏技」として案内されているケースがありますが、安全装置がエラーを出している場合はコンセントリセットを行っていいものと行ってはいけないものがあります。
この区別が付かない以上、コンセントリセットをして再起動させることはリスクの高い行為です。完全に壊れている場合は、コンセントリセットをしたところで給湯器は動作しませんが、危険になる手前でわざわざ停止してくれたんだとしたら、そこからまた起動させるのは危険なだけでなく、修理内容としての被害も大きくしてしまう行為と言えるでしょう。
安全装置が作動したら直ちにメーカーへ
安全装置がエラーを出す場合、基本的には電源の入り切りで復帰しないものが多いです。経年劣化による接触不良などであれば調子の良し悪しがありますが、通常は安全装置のエラーはお湯が使えなくなることがほとんどなので、早急にメーカーを手配してください。
点火不良であれば一時的にエラーを出すケースも考えられますが、安全装置が一時的にエラーを出すというのは考えにくいです。接触不良によって一時的なエラーを出すことはあっても、安全装置の接触不良は給湯器の経年劣化でよく見られる症状なので、他にも様々な不具合が併発している可能性があります。
給湯器の故障は早期発見によってのみ被害を最小限にできる可能性があるので、安全装置が作動した場合は直ちにメーカーに連絡し、点検・修理してもらうことをおすすめします。