給湯器の寿命や耐用年数には様々な意見があり、私のような住設業界の人間でも戸惑ってしまうことが少なくありません。そんな中、一般ユーザーの方々はどれが本当の情報かが分からなくなってしまうのではないでしょうか。
このページでは給湯器の寿命についての情報をまとめてみました。使用から年月が経過している給湯器を、修理しようか買い替えようかと悩んでいる読者の方にとっても参考になると思うので、ぜひ最後までお付き合いください。
給湯器の寿命は約10年|ただしこれは設計上の標準使用期間
給湯器メーカーでは「寿命」という言葉を使わない
給湯機メーカーでは、給湯器を使用できる期間の目安に対して「寿命」という言葉を使いません。使う場面があるとすれば、それはユーザーに対して分かりやすい説明をするために、あえて使用していると思われます。
各メーカーには給湯器の設計基準があります。それは「この使用条件で使用した場合に10年使用できる」という基準です。各家庭によってどれくらい給湯器を使用するかは大きく差が出るため、各メーカーで標準的な使用条件を用い、その条件を満たしたときに10年使えるように作られています。
では、その標準的な使用条件とはどのようなものなのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。
設計上の標準使用期間とは?
- 季節は春・秋、気温は20℃、給水温度は15℃で固定
- 給湯器の設定温度は給湯温度、ふろ温度ともに40℃
- 給湯器の使用時間は1日あたり1時間
上記の表は、給湯機メーカーのノーリツが公表している設計上の標準使用期間の算定の根拠です。簡単に言うと「この条件に沿って使用したとき、10年安全に使えるような基準で給湯器を製造している」というものです。
日本には四季があるので常に春・秋で考えるというのは分かるのですが、平均気温が20℃で給水温度が15℃というのはやや暖かい地域を想定しすぎているような気がしました。それに弊社の顧客データでは、給湯器の設定温度は42℃以上のユーザーが多く、これも40℃を基準に考えるのはやや厳しい条件と思われます。
特に暖房機能がある給湯器の場合、1日の使用時間が8時間程度、かつ11月中旬~3月上旬までの使用の想定に留まっているため、雪の降るような寒い地域では完全に足が出てしまうユーザーの方が多いはずです。
つまり「守ることが難しいような厳しい使用基準を前提に、それで10年間使用できるような設計」ですから、実際に給湯器を安全に使用できる期間は、どう考えても10年より短くなってしまうことは間違いないでしょう。
あくまで安全に使用できる期間として算出されているものなので、これを超えて使用することも可能な基準ではありますが、火災事故などの危険を負いながら使用することになるのでおすすめしません。
実際に10年以上使用できる人がいるのはなぜ?
給湯器の寿命に対する認識の違い
冒頭で「給湯器メーカーでは給湯器に対して寿命という言葉を使わない」と書きました。そしてユーザーの方に説明するときに、あえて分かりやすいように使用しているケースがあると書きました。
その理由の一つとして、給湯器の寿命に対する認識の違いが挙げられます。恐らくですが、給湯器の寿命に対する考え方はユーザーによって異なるはずです。
例えば「部品がもう取れなくなって修理ができない」という状況であれば、これは満場一致で寿命を迎えたという認識で問題ないと思います。では「修理しようと思ったらできるけど、買い替えた方がいいくらいの修理費用が掛かってしまう」という場合、これは給湯器の寿命という認識になるのでしょうか。
そして買い替えた方がいいくらいの金額というのも、個人差があるような気がします。もし修理を何度してもいいのであれば、それは「給湯器の寿命=部品が取れなくなるまで」という認識になってしまい、本来の機器寿命という考えとは程遠いものになってしまうでしょう。
部品の保有期間は製造停止から約10年
給湯器の部品にも保有期間のルールが存在します。基本的には、給湯器の製造中止から10年程度という認識で問題ありません。不遇の機種や給湯器を購入するタイミングによっては、購入して間もなく製造が中止してしまうというケースがありますが、そうでもなければ割と長い期間に渡って「修理しながら使用し続ける」ということも可能です。
極端なことを言えば、部品が取れる限り修理するという考えなら「部品が取れなくなったとき=給湯器の寿命」ということになり、本来の給湯器の機器寿命という意味合いではなくなってしまうような気がします。
1回、または2回ほどの修理をして12年前後で買い替えというパターン
弊社が所有しているアパートの給湯器を見ていると、1回か2回修理をしてトータル12年前後使用している給湯器が多かったです。これも給湯器が故障した際に修理するか買い替えるかの判断になるわけですが、50,000円以上かかってしまうような高額修理は買い換えてきました。
使用年数が7年以下で50,000円以下の修理なら積極的に修理をしていますが、それでも12年程度で買い替えになっているため、一切修理をせずに10年使用するというのは非常に珍しいケースではないかと思われます。
空室期間があると15年を超えて無故障というケースも珍しくはないものの、そもそもの趣旨とはかけ離れてしまうため割愛します。ただしインターネット上で給湯器の寿命に言及している場合、このようなケースも含めて情報発信されている可能性もあるため注意してください。
給湯器メーカーが10年を目安に設計している根拠
保証延長制度から給湯器寿命を考える
各給湯器メーカーには保証延長制度があります。これは一種の保険のようなもので、新品の給湯器についてくる1年または2年の保証期間を最大で10年まで延長できるというものです。
当然ながら別料金が発生してしまうのですが、この料金システムには非常に面白いからくりが見え隠れしています。ここではノーリツ製給湯器の保証延長「安心プランS」を例にご紹介します。
- 7年プランと10年プランの保証料の上がり方→7年目以降の故障が多い
- 10年以上の契約プランが用意されていない→10年以上使用できるように製造されていない
この料金設定を見ると、いかに7年目以降の故障が多いかが分かるかと思います。そして10年目以降のプランは用意されていません。この事実からも「給湯器メーカーは10年を超えて使用することを推奨していない」ということを痛感します。
※この内容は以下のブログサイトの記事を参考にさせていただきました。
経済産業省による徹底した指導
設計標準使用期間の算定根拠、点検を行う事業所の配置、部品の保有期間、日常的な保守の内容、設計標準使用期間よりも早期に安全上支障を生ずるおそれがある場合の注意を記載した書面を、製品に添付 ( もしくは取扱説明書に記載 )してください。
経済産業省 – 長期使用製品安全点検制度
現在、給湯器は使用開始から10年が経過すると点検を受けるようなルール作りが作られています。これは機種によって法定点検かあんしん点検かに分かれるもので、給湯器メーカーではなく経済産業省によって進められている制度です。
これは今のところ強制的なものではありませんが、給湯器を購入したときの登録義務だったり、10年が経過する前に送られてくる給湯器メーカーからのダイレクトメールだったり、給湯器本体もE888やE88を表示するような仕組みになりました。
点検を受けるには10,000円程度の費用が発生してしまいますが、10年を超えて使用するならせめて専門家による点検を受けてほしいという趣旨の内容になってます。
同時に「ストーブなどの火災事故につながっている例がすべて耐用年数を超えて使用している」という事例を挙げているため、点検を受けずに10年を超えて使用した際の自己責任という風潮は、最近になって非常に強くなったように思いました。
給湯器の寿命|何年使ったら合格ライン?
- 給湯器の寿命は7年~10年程度
- 給湯器はやや厳しめの前提条件通りに使用して、安全に使用できるのが10年という設計基準で作られている
実際に給湯器メーカーのコンタクトセンターに給湯器の機器寿命について質問してみると、大体7年~10年程度と言われます。厳しめの設計基準を守って10年なわけですから、平均的には7年~10年に落ち着くということでしょう。
年数が経っている給湯器は修理をしてもリスクが付きまとうため、10年近くになっている給湯器は買い替えるのが良さそうです。もしくは給湯器を購入した際に10年の保証延長に加入し、10年を超えて簡単な内容の故障じゃない場合は買い替えるという判断がいいのではないかと思います。