エコ志向が非常に高くなってきたのか、特にガス給湯器で高効率型給湯器がかなり普及してきました。初めて高効率型給湯器が登場してからもう20年以上になります。
最初は各給湯器メーカーの営業担当者がメリットしか説明せず、ユーザーと揉めたことがかなりありました。今はもう高効率型給湯器の全貌が見えつつありますが、これから高効率型給湯器に乗り換えようと思っている人にアドバイスをしたいと思います。
高効率型給湯器(エコジョーズ、エコフィール)とは?
エコジョーズ、エコフィールって何?
- エコジョーズ:高効率型のガス給湯器
- エコフィール:高効率型の石油給湯器
- エコキュート:電力を使ってお湯を沸かす機器
- エネファーム:ガスから電気とお湯を作る機器
「エコ〇〇〇〇」という製品名を聞くことがあると思いますが、恐らく頻繁に耳にするのは上記の4つではないかと思います。上の2つは給湯器の括りで、エコキュートはどちらかと言えば電気温水器に近く、エネファームは発電機や燃料電池というイメージでしょうか。
オール電化の一戸建ての場合はエコキュートの人気が絶大ですが、設置するのにスペースを必要とする面からもマンションに導入しにくいため、シェア率の高さはエコジョーズが断トツです。
高効率型給湯器の燃費効率が良い理由
高効率型給湯器の燃費の秘密は排ガスの再利用です。従来型給湯器では普通に捨てていた約200℃の排ガスを再利用しています。本来なら200℃だった排ガスが、最終的に約50℃になるくらいまで熱量を搾り取られていることからも、ガスの消費量が抑えられていることが伺えるでしょう。
バーナーで水をお湯に変える際、蛇口から出てきた冷たい水をそのまま熱していたのが従来のやり方です。高効率型給湯器では、冷たい水を一旦200℃の排ガスにさらしてぬるい状態にしてからバーナーで加熱しています。
給湯器に入る水の温度が高ければ高いほど必要とされる熱量は少なくて済むため、給湯器への負担は軽くなり、同時にガス消費量も抑えられるという仕組みです。
高効率型給湯器ってどれくらいエコ?燃費効率はそんなに良いの?
給湯器メーカー「ノーリツ」の試算を例にご紹介します。まずエコジョーズの年間ランニングコストですが、普通に使用すると年間約23,700円のお得になり、さらにエコスイッチを使用すると年間約32,400円お得になるという試算が出されています。
一方でエコフィールは若干物足りない数字にはなっているものの、年間約7,050円のお得になるそうです。ただしこれらの試算には前提条件があります。仮に年間で10,000円も使用していない家庭で、10,000円以上の燃料費の節約はできません。
年間の燃料消費量が多い家庭なら、ある程度の節約効果が見込めるでしょう。しかしそもそもの使用量が少ない場合や、ガス給湯器でもプロパンガスじゃなくて都市ガスユーザーの場合は少し注意が必要です(詳しくはデメリットの項目で記述しています)。
高効率型給湯器(エコジョーズ、エコフィール)のデメリット
給湯器本体の価格が高い
- OTQ-C4706AY BL(高効率型):495,880円
- OTQ-4706AY(従来型):457,380円
ノーリツ製給湯器で高効率型と従来型の条件が一緒の2機種を比較してみます。どちらも屋外据置型の4万キロの能力を持つ、フルオートの石油給湯器です。本体の価格差がメーカー希望小売価格の時点で約40,000円弱あります。
実際に給湯器を購入する際は、ここから業者からの値引きがあります。どのくらい値引きしてもらえるかは業者にもよりますが、50%値引きがあったとして20000円の価格差ですから、前項の試算通りになるのであれば3年もあれば元を取れる計算です。
給湯器を取り付ける際の施工費用、部材費が高い
ドレン配管の施工費用
高効率型給湯器を設置する際は、ドレン配管と呼ばれる配管を施工しなければなりません。高効率型給湯器は燃費を良くする過程で機器内部が結露してしまう作りになっており、この結露を排水する必要があります。
これによって従来型給湯器には必要のなかった配管が一本増えることとなり、場合によっては床下作業が必要になったり、マンションの場合は別売りの部材が必要になってしまうケースも出てくるでしょう。床下作業が必要になる場合は作業工料が、別売り部材が必要になる場合は部品代がそれぞれ高くなってしまう可能性があります。
マンションの場合は別売り部材が必要になるケースも
マンションの場合はドア付近のパイプスペースに給湯器が取り付けられているケースが多く、ここで排水管に接続できないケースもあります。そんな時は専用部材を用意し、浴室の排水にドレンを流すようなシステム作りをしなければなりません。専用部材「浴槽三方弁ユニットCVU-1」は税込み15,950円です。
排気筒にも高効率型給湯器専用の物がある
一方で排気筒にも高効率型給湯器専用の物が存在します。上記画像の左側が従来型給湯器用、右側が高効率型給湯器用です。2倍とまでは言いませんがそれなりに金額差があります。
実際には高効率型給湯器でも従来型給湯器用の排気筒を使えるケースがあるので、それを使うかどうかは現場判断にはなりますが、排気筒も高い物を使用しなければならない場合は、従来型よりも15,000円ほど高くなってしまうので注意が必要です。
中和器の交換が必要
高効率型給湯器には、従来型給湯器には無かった中和器と呼ばれる部品が搭載されています。中和器が必要な理由は高効率型給湯器内で発生する結露が酸性のため、中和してから排水しなければ配水管を腐食させてしまうからです。
そしてこの中和器は給湯器部品の中では非常に珍しい寿命のある部品で、使用時間が一定時間を超えると給湯器が使用できなくなってしまいます。中和器の交換費用は約15,000円前後ですが、これは10年保証に加入していても有償修理になるので注意してください。
ランニングコストを細かく見ると気になる部分が出てくる
- エコジョーズ:年間約23,700円(エコスイッチの利用で年間約32,400円)のお得
- エコフィール:年間約7050円のお得
ランニングコストについて調べたとき、ノーリツでは上記のような金額を掲載していました。当然これには算出の根拠があります。以下にエコジョーズの計算方法について引用するので確認してください。
試算データの燃料単価は、LPガス:4.9円 ⁄ MJでの算出です。(LPガス料金はいずれも全国平均)
ランニングコストは消費税相当額加算前の金額で算出されています。
機種によりランニングコストは異なりますので、該当機種のカタログをご覧ください。
NORITZ – ランニングコストの計算について
まず都市ガスではなくてLPガスでの試算となっており、LPガスは都市ガスに比べると高い傾向にあるので、都市ガスユーザーの場合はここまでお得にならない可能性があります(元々金額的に高い方が節約効果が期待できるため)。
そしてここには掲載していませんが、公式サイトを細かく見ていくと4人家族を想定している上に使用頻度が割と高めに設定されています。少なくとも一般的な家族の使用量よりは多く感じました。
エコフィールも一緒で灯油代が高い時期を想定して試算しているので、本来受けられる恩恵よりも誇張されているような気がします。いずれにしても節約できる金額はユーザーによって異なるため、お湯の使用量がそこまで多くない場合は簡単に計算してみるといいかもしれません。
給湯器を買うなら高効率型と従来型どっちがおすすめ?
今から給湯器を購入するなら、高効率型以外の選択肢はないと思います。特にガス給湯器の場合はエコジョーズを選ぶのが間違いないでしょう。実際に従来型よりもお得になることは間違いないですし、中和器の修理費用や部材費を加味しても十分お得になることが多いです。
ただ、多くの方が思っているほどお得にならないことが多く、年間で30,000円も得をすると聞かされて購入したのに実際には10,000円しかお得になっていないというような場合、きっと損をした気持ちが芽生えてしまうのではないでしょうか。
高効率型給湯器のデメリットをすべて理解した上で選ぶのであれば、非常に良い買い物です。給湯器を交換する際は、ぜひエコジョーズやエコフィールを前向きに検討してみてください。